大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)14号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決が本願発明と引用例記載のものとの重要な相違点を看過したため、本願発明の奏する顕著な作用効果を見落とした旨主張するが、以下説示するとおり、本件審決の認定判断は正当であつて、原告がその取消事由として主張するところは、理由がないものというべきである。

成立に争いのない甲第二号証(本願発明の明細書)によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明の項には、本願発明の目的ないし技術的課題に関し、「この発明は自動販売装置に関し、特に公害防止のため空容器を収納し、さらにつぶす、くだく、割る等の加工部を備え、空容器と通貨を挿入することにより販売物を取り出し空容器を回収することができるようにするための新規な装置に関する。従来、用いられていたこの種の装置は種々のものが開発されているが、いずれも通貨を挿入するだけで販売物がでてくるためあとの空容器を回収する手段がなく、公害防止の上からも大きい問題となり、さらに省資源の上からもきわめて好ましくない、例えばコーラのビンやカンがゴミとしていたるところに廃棄されさらに、玉子のパツク等もゴミとなつている。このような不都合を解決する手段として、空容器を販売店に持参するように要請されているが、容器を持たない場合でも販売はしてもらえるため、仲々容易でなく、この種の空の容器を完全に回収することはきわめて困難であつた。この発明はこの種の欠点をきわめてすみやかに除去するためのきわめて効果的な手段を提供することを目的とし、とくに空容器をつぶす、くだく、割る等の加工部を備えさらに空容器と通貨とを販売装置に挿入しなければ販売物がでてこないようにした構成によりこの目的を達成している。」(第一頁第一二行ないし第二頁第一一行)との記載のあることが認められる。しかしながら、前示本願発明の要旨に照らすと、本願発明に係る自動販売装置にあつては、「通常は通貨のみで製品が販売され、空容器と通貨を入れた場合は、……空容器代分差引いた価格で製品が販売されるように構成した」ものであるから、本願発明は、前示発明の詳細な説明の項にあるように、必ずしも「空容器と通貨とを販売装置に挿入しなければ販売物がでてこないようにした構成」のものに限定された発明とは解されず、また、成立に争いのない甲第三号証(昭和五八年一月三一日付手続補正書)中の特許請求の範囲の記載(前示本願発明の要旨と同じ。)によると、回収した空容器を「つぶし、くだく、割る等の加工部を備え」ることは、本願発明の特許請求の範囲にこれを規定する記載がないことが明らかである。

そうすると、本願発明に係る自動販売装置は、通常は、通貨のみで製品が販売されるが、公害防止のためにできるだけ空容器を回収すべく空容器と通貨を入れた場合には、空容器代分を差し引いた価格で製品が販売されるような構成とした点に主たる特徴があるものと解される。

ところで、引用例(特公昭三七―一三五六一号特許公報)が、本願発明の特許出願前日本国内において頒布された特許公報であることは原告において明らかに争わず、また、引用例に本件審決認定のとおりの記載があり、本願発明と引用例記載のものとの間に本件審決認定のとおりの各相違点が存すること、並びに右相違点についての本件審決の認定判断は原告の認めるところ、原告は、右相違点のほかに両者の間には重要な相違点、すなわち、回収できる空容器の範囲に関し、本願発明においてはそれを販売した自動販売機からの空容器に限定されず、同種のものであれば、よそで販売された空容器をも回収できるのに対し、引用例記載のものにあつては、その特定の自動販売機から販売された空容器しか回収できない旨主張する。よつて、この点について検討するに、原告の認める右引用例の記載内容に成立に争いのない甲第四号証(引用例)を総合すれば、引用例には、所定の硬貨を投入してびん一個を取り出すときこの取出し一個分を記憶装置に記憶させ、空びんの回収により右の記憶を消すと同時に空びん代を釣銭として返還する構成のびん詰食品自動販売機が開示されているが、引用例記載の記憶装置が空びんを回収するに当たつてそれが販売した特定の販売機から販売されたものであるか否かを照合する構成のものであると理解すべき記載はなく、引用例記載の自動販売機も空びんの仕様、規格が同一であれば、他の販売機や手渡しで販売されたものも回収できるものと認められるから、回収できる空容器の範囲についてそれを販売した販売機からのものに限定されない点で本願発明と引用例記載のものとの間に原告主張のような相違はなく、したがつて、この点の原告の主張は採用できない。

そうすると、本件審決の引用例の認定には原告主張のような誤りはなく、本件審決の認定判断は正当というべきである。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

全体がほぼ箱形に構成されたケース体と、このケース体に設けられた製品収納部と、このケース体の面部に設けられた製品取出口および空容器挿入口と、前記ケース体の面部に設けられた通貨挿入口および通貨返却口と、前記通貨挿入口に接続された通貨検出部と、前記空容器挿入口に接続された容器検出部と、前記通貨検出部と容器検出部からの信号を入力させるための応答部と、この応答部からの信号により製品を前記製品取出口に送るための販売物取出部と、前記応答部からの信号により空容器代を前記通貨返却口に返すことができる容器代返却部と、前記ケース体に設けられた空容器収納部とを備え、通常は通貨のみで製品が販売され、空容器と通貨を入れた場合は、前記応答部で一致を検出して空容器代分差引いた価格で製品が販売されるように構成した自動販売装置。

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